近年、銀行業界では出向という形での人事異動が増えています。
「突然の出向を言い渡されたらどうしよう…」「出向って実際どんな感じなんだろう?」そんな不安や疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、銀行員の出向について、その実態や影響、そして心構えまでを徹底的に解説していきます。
銀行での長年の経験と、多くの出向経験者の声を基に、あなたのキャリアにとって重要なポイントをお伝えしていきましょう。
銀行員が出向を経験する理由とは?

銀行員の出向には、実はさまざまな背景や目的があるんです。単なる人員調整というわけではなく、銀行の経営戦略や人材育成の観点から重要な役割を果たしています。
出向を「左遷」と考えがちですが、実は大きなチャンスになることも。ここからは、銀行員が出向を経験する主な理由について、詳しく見ていきましょう。
組織再編と人員調整の一環としての出向
銀行業界では、デジタル化の進展や経営環境の変化により、従来の支店業務が大きく変わってきています。
窓口業務の自動化やオンラインバンキングの普及により、支店での対面業務は減少傾向にあります。
そのため、人員の再配置や適正化が必要となり、その手段として出向が活用されているのです。

でも、出向って結局のところリストラの前段階なんじゃ…

そんなことはありません!むしろ、新しいスキルを身につけるチャンスなんです。
- 銀行業務のデジタル化による人員構成の見直し
- 支店統廃合に伴う人員再配置
- 業務効率化による余剰人員の活用
- グループ会社全体での人材の最適配置
人材育成と多様な経験を積むための出向
銀行では、若手からミドル層まで、キャリア開発の一環として戦略的に出向を活用しています。
特に30代後半から40代前半の社員にとって、出向は重要なキャリアステップとなることが多いんです。
なぜなら、この時期は専門性を深めつつ、マネジメント能力も求められる重要な転換期だからです。
- 異業種での実務経験
- 新しい業務知識の習得
- マネジメントスキルの向上
- ビジネスネットワークの拡大
取引先企業との関係強化を目的とした出向
取引先企業への出向は、銀行にとって重要な営業戦略の一つでもあります。
特に、メインバンクとして深い関係を持つ企業グループとの間では、定期的な人材交流が行われることも。
この場合の出向は、単なる人材育成だけでなく、ビジネス面での関係強化という重要な役割を担っているんです。

でも取引先への出向って、銀行員としてのキャリアから外れちゃうんじゃないの?

むしろ逆です!取引先の事業を深く理解できることは、銀行員としての大きな強みになりますよ。
- 企業の内部事情への深い理解
- 実務レベルでの人脈形成
- 業界特有の知識・ノウハウの習得
- 融資判断能力の向上
銀行員の出向に関する実態と現状

銀行業界における出向の実態は、年々変化しています。特に近年は、デジタル化の進展やフィンテックの台頭により、従来とは異なる形での出向が増えてきているんです。
ここからは、現在の銀行員の出向事情について、年代別の特徴や傾向を詳しく見ていきましょう。
40代での出向や給与ダウンの現実
40代での出向は、特に慎重な対応が必要となるケースが多いんです。というのも、この年代は家族の教育費や住宅ローンなど、固定費が最も高くなる時期。
そのため、給与面での変更は生活に大きな影響を与える可能性があります。

40代での出向って、もう戻れないってことなの…?

いいえ、むしろ新たなキャリアステージへのステップアップのチャンスです!
この年代の出向では、特に金融知識やマネジメント経験を活かせる部門への配属が多くなります。例えば、取引先企業の財務部門や、グループ会社の経営企画部門などです。
この時期の出向を成功させるポイントは、これまでの経験を活かしつつ、新しい分野にも積極的にチャレンジすること。
特に、デジタル関連のスキルアップは、今後のキャリア形成に大きな武器となります。
給与面での変化についても触れておく必要があります。確かに、出向により基本給が下がるケースは存在します。
しかし、出向先での成果次第では、インセンティブや昇進の機会も期待できるんです。重要なのは、短期的な給与の変動だけでなく、長期的なキャリア形成の視点で判断することです。
役職定年後の出向と再雇用の実情
役職定年を迎える50代後半での出向は、その後の再雇用を見据えた重要な転機となります。
多くの場合、グループ会社や関連会社への出向となりますが、この時期の出向では、これまでの経験やスキルを活かせる専門職としての道が開かれることも。
ただし、待遇面では大きな変更が生じる可能性が高いため、早めの準備と心構えが必要です。
役職定年後の出向における実情を具体的に見てみると、多くの場合、管理職としての役割から専門職への転換が求められます。
例えば、融資審査の専門家として信用保証協会に出向したり、コンプライアンスの専門家として関連企業で活躍したりするケースが増えています。
この時期の出向で注意すべき点は、プライドや過去の成功体験にとらわれすぎないことです。新しい環境では謙虚な姿勢で学び続ける姿勢が重要になります。
同時に、これまで培ってきた豊富な経験と知識は、出向先にとって貴重な財産となることも忘れてはいけません。
待遇面については、基本給の減額は避けられない場合が多いのが現実です。しかし、再雇用制度と組み合わせることで、65歳まで安定した雇用を確保できるメリットもあります。
銀行から出向したら給料は銀行員の時よりも下がる?

次に、出向したら給料がどうなるかについて説明させていただきます。出向は銀行に籍を置いたまま他の会社に行き働くことですので給料は銀行員時代と変わらないのが一般的です。
出向後の仕事内容によって多少変化することがありますが、大幅に給料が減ってしまうなんてことはないでしょう。
ただ、出向後の給料をどちらの会社の水準に合わせるのかは2社間の取り決めによります。出向先の水準に合わせることになれば給与は基本的には下がります。
ですので、出向の場合でも給料が減少する可能性があります。毎月の給料は変わらなくてもボーナス額が減少したという話はよく聞きます。
転籍の場合は給料は下がる
出向の場合は給料は元の水準が維持されるケースが多いですが、転籍となると話は変わります。
転籍は出向先の企業と新しく雇用契約を締結するため給与もその会社の水準に合わせた金額になります。
転籍先の企業の方が給与水準は低い場合が多いので転籍すると基本的に給料は下がります。銀行との雇用契約は解消されていますので転職したのと同じ状況というわけです。
銀行員の出向先について経験者2名の事例を紹介!
今回は2名の出向経験者の事例を紹介させていただきます。やはり、20代の出向と50代の出向では中身が大きく異なることがわかると思います。
メガバンクから20代で取引先へ出向した男性の事例

私は30代の男性で、大学では情報系を専攻しデータ分析やIT系の技術を学びました。大学を卒業してすぐ新卒でメガバンクに入行しました。
入行後は法人営業を担当後し、本部の企画系の部署で法人/個人のマーケティングやデータ分析業務に従事しました。
入行5年目から2年間程度、当行のシステムを開発しているシステム開発会社へ出向。出向先では主にデータ分析に関する技術を学びました。
銀行員時代の仕事内容
私は本部の企画系の部署で、マーケティングやデータ分析関連の業務に従事し、法人系の企画部署、個人向けの企画部署、リスク管理系の部署など、さまざまな本部部署と連携しながら、ニーズに即した分析案件やマーケティングのサポートを行っていました。
個人向け業務では、主に当行サービスをお客様により利用していただくためのキャンペーンの企画や、キャンペーンの効果測定のための分析、マーケティング用の顧客ターゲティングリストの作成などを中心に実施していました。
法人向けの業務でも基本的にはキャンペーンの企画サポートや効果測定などを行っていました。
リスク管理系の部署とは、企業や個人の与信判断に関する評価指標の検討などでデータ分析のスキルを活用しながら評価モデルの作成などを行っていました。
定量的なデータ分析のためのデータサイエンス力、及びAIモデル作成などに関わるプログラミングスキル、連携先部署の業務に関する知識もあったほうがいいのは間違い無いですが、相手部署の担当者と一緒に案件を進めるので、こちらに業務知識がなくてもなんとかなるシーンは多かったです。
出向先での仕事内容システム開発を担当しているシステム開発会社
私が出向したのは当行のシステム開発を担当しているシステム会社でした。出向した会社では2年程度勤務しました。給与は銀行員時代と変わりませんでした。
出向した会社でしていた仕事内容は以下の通りです。
- データ分析に関わる技術のリサーチ、習得
- システム開発会社として行っているデータ分析業務の推進
私がしていた仕事は統計解析や人工知能に関連する数学的な理解や、実装するためのプログラミングスキルの習得などです。
他にもシステム開発会社として行っているデータ分析業務の推進なども行っていました。
出向先では統計解析など数学的な基礎知識が必要とされました。プログラム実装力(言語的には主にはpythonかjavaでした)や英語力(場合によっては英語の論文を読むこともあるため)も必要でした。
出向して大変だったこと
周りは全員システム開発などを経験してきている人たちなので、そういった人たちの仕事についていくのはとても大変でした。
周りの人たちにとっては当然のことでも自分にとっては初見なことも多く、一々調べたり人に聞きながら作業を進めていたのは結構大変でした。
当時住んでいた場所は銀行には近かったものの出向先からは少し遠い場所だったため、通勤が大変になりました。
出向中にもたまに銀行側の仕事が降ってくることもあり、二刀流で仕事をすることもあり、なんかいいように使われてるなという印象を持ちました。
出向して良かったこと
自分のスキルを高められたことは良かったです。銀行にいるだけではたどり着けなかった地点までスキルを高められたました。
また、外の世界を見ることができ、自分の会社の良さや悪さを客観的に見ることができるいい機会でした。結果的にこの出向がきっかけで転職をしました。
メガバンクから50代で関連会社へ出向した男性の事例

私は現在51歳の男性です。大学卒業後、メガバンクに入行し主に法人営業を中心にに26年勤務しました。
その後、関連会社に出向になり半年で退職しました。所有していた中小企業診断士及び社会保険労務士の資格を活かし、現在はコンサルティング会社で経営コンサルタントを行なっています。
銀行員時代は東と西の拠点を跨ぐ転勤を何度も経験して、引っ越しを何度もしました。
銀行員時代の仕事内容
私は都内の法人営業部でマネージャー職を行なっていました。具体的には、取引先の企業に向けての融資・運用・事業承継・M&A・海外進出・販路拡大・組織開発などのニーズに対応して、適切なソリューションを提供する部署で、部下10名程度を抱えプレイングマネージャーをしていました。
仕事内容としては、お客さまである企業と直接面談などコンタクトする部分と内部管理の資料作りなどが半々ぐらいでした。
また、時間を作っては新しい顧客を開拓するような飛び込み営業・紹介営業なども行なっていました。
銀行の性質上、融資でのソリューション解決が基本とはなるのですが、近年は企業のニーズも多様化しているので、いろいろな部署と協力して、あるいは外部の税理士などどもチームを組んで動くことが多くなっていました。
ただ、問題解決の難易度が高い場合、解決した場合の顧客満足度も高くなるので、いただける対価も必然的に大きくなりそれなりにやりがいのある仕事だったと思います。
出向先での仕事内容
私の出向先は大手保険代理店で法人に対しての損害保険営業が私の仕事でした。出向先の組織は旧態依然としていて、銀行からの出向者が役員陣の大半を占めている会社でした。
古き良き昔の銀行時代のしきたりを頑なにプロパー社員も含め強要してくる体質でした。したがって、パワハラも横行していましたし、働き方改革も進んでいませんでした。
会社に来なくなる人も近いところで複数人いて、人事部にも言ったのですが全く聞き入れてもらえませんでした。
仕事内容は依然と変わらず法人営業でしたが、保険料をいかに安くするかどうかだけの問題解決が中心で、顧客に対してというよりも保険会社に対しての交渉が多く、あまり面白い仕事とは思えませんでした。
給与面については、銀行に在籍したままの出向だったのでさほど下がらなかったのですが、賞与の減額分は大きく、トータルで10%程度下がりました。
ただ、そのまま転籍すると大幅に下がることは確実だったので、早期退職優遇制度に応募し、以前より転職を考え取得していた資格を活かそうと考え、コンサルティング会社への転職を行い、また独立診断士としても一部活動しています。
銀行から出向する場合、大きくは取引先か関連会社に分かれます。私のように関連会社に出向した場合、上司は銀行の人とかのケースも多いです。
給与などの待遇面・仕事面など劣化して上下関係はそのままといった如何とも耐え難い状況に陥るケースが多いのではないかと思います。
私はそんな環境に耐えられずに出向して半年で退職しました。出向はメガバンクの宿命とも言えますので、若いうちから備えておくことをお勧めします。
最後に
出向はメガバンクで働くのであれば誰にでも起きうることです。出向の内示はいつされてもおかしくありません。
銀行員として充実した毎日を送っていたのに突然出向になり、出向先の仕事内容も人間関係もイマイチで転職をしたという話はよく聞きます。
若いうちから自分のスキルを磨いておき、何が起きても対応できるようにしておくのが理想です。少しでもスキルアップをして将来への備えをしておきましょう。
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