銀行員といえば車に乗って大手企業に行き融資の話を大きな会議室でするなんてイメージを持っているかもしれません。大手の都銀であればそんな仕事もあるかもしれません。
しかし、地銀や信用金庫の営業は全くそんなことありません。雨の日も風の日もバイク(カブ)に乗って営業回りです。
冬の寒い日にバイクで移動ってめちゃくちゃ辛いんです!夏は暑いですし日焼けもします。ワイシャツを脱いだらパンダみたいに白黒になっている銀行員の方もよくいらっしゃいます。
特に大変だと感じる点は以下の3点です。
- 半年ごとに営業成績はリセット
- 営業ノルマの種類が多い
- 支店の成績が悪いと給料も低い
ということで、今回は私が地方銀行で働いていてきついと思った点やどんな人が向いているかについて紹介させていただきます。
地方銀行・信用金庫の営業の仕事内容
私が地方銀行に勤めていた際に行っていた仕事内容は以下のようなものです。
- 既存の取引先である法人や個人事業主への融資提案
- 新規顧客開拓
- 金融商品の販売
- 定期積金の集金
地方銀行のメイン業務と言えば融資なので既存の取引先に融資提案を行います。ただ、このご時世ですので設備投資を行うためにお金を借りる会社は少ないです。
今の融資先だけに頼っていると収益を上げることは難しくなりますので新規顧客開拓をする必要があるというわけです。
新規顧客開拓営業
この新規顧客開拓というのが大変です。基本的にどの法人や個人事業主にも既にお付き合いのある金融機関というのは必ずあります。
また、融資も既にその金融機関から受けているという状態がほとんどです。ということはお金を新たに借りる必要性は基本的にはありません。
でも、こちらとしては営業のために融資をしたいわけです。そうなると融資の取り合いが起こります。
「今借りている金利よりも低い金利で融資しますので借りませんか?」という提案をするわけです。こんな融資争奪戦が繰り広げられているのが地方銀行の融資というわけです。
金融商品の販売
融資の他にも今は金融商品の販売業務も行います。最近では若手社員は金融商品の販売がメイン業務となってきています。
金融商品というのは投資信託や個人年金保険、学資保険、個人向け国債などの総称です。これらを個人や法人顧客に販売するのが仕事です。
地方銀行で金融商品を購入する方は基本的にインターネットを利用しないような方々です。インターネットを利用される方ならネットで購入するからです。
その方が断然購入手数料は安いですからね。そんな方を相手に元本割れリスクのある金融商品を販売するわけです。
本当に自分が良いと思っている商品ならお客さんに提案できますが、そうでない商品も営業ノルマのために販売する必要があります。
定期積金の集金業務
毎月決まった金額を積み立てて貯めていく商品のことを定期積金というのですが、その毎月の決まった金額を集金に行く業務があります。
法人や個人のお宅に訪問し数万円を回収するという業務です。これがとても面倒くさいんです。
法人であれば毎月訪問することにより新たな融資に繋がったりすることもありますのでメリットはあります。
しかし、個人の顧客先で一度金融商品の販売を断られた先であると営業的に訪問するメリットはほとんどありません。
毎月訪問することで何らかのチャンスはあるはずだ!と言われる方もいますし、たまには何らかの形で報われることもあります。
ただ、そんなことは10年近く働いてきてほとんどありませんでした。そう考えるとなくても良い業務かななんて思ったことは何度もあります。
地方銀行・信用金庫の仕事の魅力
地方銀行の仕事には多くの魅力があります。まず、地域に密着したサービスを提供することで、顧客との関係が深まります。
都市部の大手銀行とは異なり、地方銀行では顧客一人ひとりとのコミュニケーションが重視されるため、信頼関係を築くことができます。
また、地域の経済や文化を深く理解することで、地域社会に貢献する仕事をする喜びを感じることができます。
さらに、地方銀行は地域の中小企業や個人事業主との取引が多いため、多様なビジネスモデルや事業内容を学ぶことができ、幅広い知識を身につけることができます。
地方銀行・信用金庫の仕事の大変さ
営業をしていてきついことや不満に感じることは数多くありましたが、特にきつかったことは以下の点です。
- 売りたくない金融商品を販売すること
- 半年ごとに営業成績はリセット
- 営業ノルマの種類が多い
- 支店の成績が悪いと給料も低い
銀行のメイン業務は融資です。預金の利息と融資した金利の差「利ザヤ」で稼ぐのが銀行の本業ですので、融資の仕事をバリバリやるものだと思っていました。
しかし、私が地方銀行で勤務していた際のメイン業務は投資信託や保険の販売でした。
一昔前まで銀行で投資信託や保険商品の販売をすることができませんでしたが、投資信託の販売も1998年12月に銀行窓口での販売が解禁されました。
また、保険商品も2001年より段階的に緩和が始まり、2007年12月には全面的に解禁されました。
2005年頃に「グローバルソブリンオープン(グロソブ)」と呼ばれる商品が流行りましたので知っている方も多いと思います。
その投資信託や保険商品を毎日個人宅を訪問して販売していました。自分は証券会社に勤務しているのか?と思う日々でした。
もちろん融資業務も行いましたが、ほとんどの時間を金融商品の営業に費やしていました。
売りたくない金融商品を販売させられる
私は銀行員時代投資信託や保険を販売することはとても嫌でした。銀行の顧客は証券会社の顧客と異なり、金融知識が豊富だという方は多くはありません。
そのため、投資信託という名前を初めて聞いたという方も少なくありません。そんな方々にリスクのある金融商品を売らないといけないんです。
投資信託は元本保証の商品ではありません。投資信託の価格が下がってしまい損をする可能性も十分考えられます。
ただ、営業ノルマがあるので販売するしかありません。お客様からの言葉で多かったのは、あなたが大丈夫だと言うなら買ってあげるよという言葉です。
営業成績的には嬉しかったですが、精神的にはとてもつらかったです。仲の良いお客様に言われると余計につらかったです。
半年ごとに営業ノルマがリセットされる
次に、半年ごとに営業ノルマがリセットされるのはきつかったです。どれだけ頑張って営業成績を上げても半年後には全てリセットされて0からのスタートです。
また半年間同じ業務を繰り返すのかと思うと嫌になりました。これを定年まで何回繰り返すんだ?と考えたら辞めたくなりました。
営業ノルマの種類が多すぎる
営業ノルマの種類が多いこともきつかった点です。営業は融資だけでなく金融商品の販売やクレジットカードの契約も取ってくる必要があります。
限られた時間の中で全て達成する必要があります。達成可能な現実的なノルマであれば頑張れますが、基本的に目を背けたくなるようなノルマが与えられます。
一つだけでもきついのに、全て達成するなんて無理だろうと同期と何度も愚痴を言い合いました。
支店全体の成績が悪いと給料が低くなる
一番不満だったのはどれだけ自分のノルマを達成しようと支店の成績が悪いと給料が低いという点でした。連帯責任というわけです。
頑張ったところで給料が上がらないのでモチベーションはだだ下がりです。
地方銀行・信用金庫の仕事のやりがい
地方銀行や信用金庫の仕事は、都市部の大手銀行とは異なる独特のやりがいがあります。その最大の特徴は、地域社会との深い結びつきです。
地方銀行や信用金庫は特定の地域に密着してサービスを提供しています。そのため、顧客との関係が非常に深く、地域の人々の生活やビジネスに直接関わることができます。
地域経済を支える役割を果たすことができる
まず、地方銀行の仕事を通じて、地域の経済を支える役割を果たすことができます。
地域の中小企業や個人事業主は、資金調達や経営相談など、さまざまなサポートを地方銀行から受けています。
これらの企業や事業主が成功することで、地域の雇用や経済が活性化し、地域全体が豊かになるのです。地方銀行のスタッフとして、その一翼を担うことは非常に大きなやりがいとなります。
地域に合ったサービスの提供ができる
また、地域の文化や歴史、風土を深く理解しているため、その地域に合ったオリジナルのサービスを提供することができます。
例えば、地域の伝統的な行事や祭りに関連した金融商品を開発したり、地域の特産品を活用したイベントを開催するなど、地域の魅力を最大限に活かしたサービスを展開することができます。
地域の人と深い信頼関係を築くことができる
さらに、地方銀行の仕事を通じて、地域の人々との深い信頼関係を築くことができます。
都市部の大手銀行とは異なり、地方銀行や信用金庫では、顧客一人ひとりとのコミュニケーションを大切にしています。
そのため、顧客の人生の大切な節目やビジネスの成長を間近で支えることができるのです。これは、銀行業務以上の深いやりがいとなります。
地域社会の発展に貢献できる
また、地方銀行は、地域のさまざまな団体や組織と連携して、地域社会の発展に貢献する活動も行っています。
地域の子どもたちへの金融教育や、地域の観光資源を活用したプロジェクトなど、地域とともに新しい価値を創出する取り組みに参加することができるのです。
このように、地方銀行の仕事は、地域社会との深い結びつきを持ちながら、多岐にわたるやりがいを感じることができる仕事です。
地域の人々やビジネスの成功を支え、地域社会の発展に貢献することで、自分自身の成長や達成感を感じることができるのです。
地方銀行・信用金庫では営業ノルマを達成しても給与は変わらない
銀行も営利企業ですので利益を上げる必要があります。そのため、各銀行員に対して営業ノルマが与えられます。
各銀行によってノルマの種類は違うと思いますが、私が勤務していた地銀では融資・投資信託・保険の3種類の目標が設定されていました。
どれか一つでも達成することは困難なのに3種類も毎月目標を達成しないといけないことがきつかったです。
何が一番きつかったって、頑張ったからといって給与には反映されないという点です。どれだけ頑張っても毎月の給与は変わりません。
さらに、自分一人頑張っても店舗全体の業績が悪いとボーナスは減らされます。何のためにこの半年仕事してきたんだろうって何度思ったかわかりません。
これなら怒られない程度に適度に仕事したらいいんじゃないか?と思うようになりました。そしてこの状況に嫌気がさした優秀な銀行員が辞めて行っていました。
地方銀行・信用金庫で今後10年以上同じ仕事をすると思うとキツイ
地方銀行が統合したなんてニュースがテレビやネットで報道されることが最近よくあります。私が働いていた銀行でもずっと合併するんじゃないかという噂は流れていました。
合併した場合、私が働いていた銀行は吸収される側だったので、合併したらどうしようとヒヤヒヤしていました。
そんな今後どうなるかわからない地方銀行で勤めていて、50代になって合併して役職から外されるなんてことになったら目も当てられません。
10年後に自分の働いている銀行があるかどうかわからないので、いつかは転職したいと考えていました。
ただ、実際には働いて5年で銀行を退職し転職しました。その理由はこの先10年以上同じ業務をすることを考えたら嫌になったからです。
毎日ノルマを達成するためにバイクで営業をして、仮にその月の営業ノルマを達成したとしても翌月にはリセット。
それを毎月繰り返し、毎年繰り返すことを考えたらゾッとしました。私の上司もこんなきつい仕事、家族がいなくて独り身だったらとっくに退職していると言っていました。
自分だけじゃなくて上司も思っているんだと思ったら、これ以上この銀行に残る意味ってあるのかな?なんて思うようになりました。
地方銀行・信用金庫の営業に向いているのはこんな人
地方銀行の営業の仕事が向いているのは以下のような人です。
営業に向いている人
私の同期は100人近くいましたが、5年経った頃には半数程度は辞めていました。地方銀行で営業として働けられる人は以下のような人だと思います。
- 精神的に凄くタフな人
- 勉強し続けることができる人
- 気配り上手な人
- 正確な業務を行うことができる人
まずは精神的に凄くタフでないと生き残ることは難しいです。上司から営業ノルマについて毎日のように詰められますので精神的に弱い人だと長続きしません。
また、金融業界は日々変化していますので勉強し続ける必要があります。顧客との会話をするにしてもある程度の金融知識がないと世間話もできません。
ですので、毎日ニュースを見たり日経新聞を読んだりし、勉強し続けることができる人でないと営業を続けることは難しいです。
気配り上手であることも営業を行っていく上で重要なことです。顧客は営業の仕事をよく見ていますので気配りができないと嫌われます。
嫌われてしまうと営業なんてできませんし、最悪の場合担当を変えてくれなんて言われることもあります。そうならないためにも気配り上手で相手のことを気遣える人である必要があります。
お金を取り扱う仕事なので、他の業種よりもこの能力は必要となってきます。
最後に
私は地銀に5年勤めて転職しました。転職して今は教育業界に勤めています。給与は銀行員時代よりも減りましたが全く後悔していません。
ストレスは減り体調が良くなったからです。どれだけ給与が良くても元気な身体があってこそお金は使えるものだと今は思っています。
ただ、銀行で勤めた経験は今の仕事でも活かすことができています。激務の中で仕事をしていたからこそ今の仕事の日々の業務も苦もなくこなすことができています。
また、銀行員時代の辛さに比べたら楽に感じることも多々あります。ですので、銀行での経験はムダにはなりません。
転職を考えているという方は今の経験を活かしてぜひ次の仕事先を探してみて下さいね。
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