「このまま信用金庫で働き続けていて、本当にいいのかな…?」そう感じている人、多いんじゃないでしょうか。
安定した職場とはいえ、ノルマや将来への不安、働き方にモヤモヤすることも。今回は、実際に30代で信用金庫を辞めた体験をもとに、後悔のない転職についてお話しします。
信用金庫を辞めようと思ったきっかけ

信用金庫って地域密着で安定感もあるし、「辞めたい」と言い出しにくい雰囲気、ありますよね。
でも、それでも辞めようと思ったきっかけは…実はたくさんあるんです。ここでは、転職を意識しはじめた本音の部分を紹介します。
私は30代前半で10年間信用金庫に勤務していましたが今年の3月末に退職しました。信用金庫に勤めていた時の年収は650万円程度です。
仕事内容は渉外係を担当しており、預金や融資推進を中心として保険の販売やクレジットカードの推進など何でも屋みたいな形でやっていました。
また、渉外で融資の話を得てきた時には自分で顧客と借入金額及び金利、借入期間等の交渉を行い、資料を整えて本部へ書類申請し、本部決裁を取った後に融資の実行まで行っていました。
得てくる話は、事業資金や他行の借り換え、消費者ローンの支援など何でもありました。さらに営業の役席も務めていたため、部下の指導も行っておりました。
ノルマのプレッシャーに疲れた毎日
どこの会社でも変わりませんが、何かにつけて、毎月キャンペーンという名の目標があります。
もちろん年間の預金増加額、融資の増加額などは別にありますが、それとは別に2ヶ月間で預金を5億近く集めてこいや、3ヶ月間で保険を10件契約してこいなど毎月何かしらあります。
また、その目標の数字は本部で考え各支店に割り振られます。当たり前ですが、渉外係が数字を集めてきます。
預金にしても保険にしても限りがありますので、短期間でどうこうならないこともあります。
それでも数字が目標に届かないまま期限に近づいて来ると本部から何としてでも目標に届かせろという無理難題のような指令が飛んできます。
預金であれば新規開拓をしたり既往顧客からの紹介、既往顧客に頼み込んで無理矢理数字を作ることは出来ますが、保険の場合にはそういう訳にはいきません。
さらに今のご時世で保険に加入していない人はほぼいません。それでも何とかしろ、何か考えろと策がある訳でもないのに頭ごなしに押し付けてきます。
結局取引の厚い顧客にお願いセールスとなるのですが、そう何度も引き受けてくれる良い人はいません。
なので、自宅に帰った後も仕事の事が頭から離れず、休日もあれどうしようやどうしたら目標に辿り着けるのだろうかと仕事の事ばかり考えてしまいます。
また、その結果無理矢理目標を達成したとしても褒められる事はなく、当然だなと言わんばかりに次のキャンペーンの数字を押し付けられるのがとても辛かったです。
このまま続けても未来が見えないという不安
職場の環境については、上司であっても何でも言える風通しの良い環境だったと思います。
しかし、支店長によっては、顔色を伺って話しかけないとタイミングを間違えると営業時間中であっても怒鳴られるということもあります。
私が務めていた会社には170名程度社員がいます。しかし、30代の職員が圧倒的に少ないです。
ですので、20代後半の職員を知識や経験が足りないにも関わらず、役席に登用していることから、役職に見合った仕事が出来ていません。
また、管理職までいけば実力次第で若くして登用されることがありますが、監督職については基本的に年功序列のため実力不足の役席がたくさんいます。
それにも関わらず登用された者は自分は役席だというよく分からないプライドがあるのか仕事を溜め込み、管理職に叱責を受けているということが度々見受けられます。
そのため、実力のある平社員の者が監督職に気を遣い、仕事を代わりに行っていたり、管理職の者が監督職の者に頼んだ仕事が、監督職の者から平社員の者に回ってくることがしばしばあります。
それもそんなに重たい内容ではなく、時間をうまく使って取り組めばそんなに負担にならない内容な物ばかりです。だからといってそういう職員の年収が高いということはありません。
ですが、役員の報酬は年々増加しており、下がいくら頑張っても上に吸収されているような形になっています。
上の者は基本給やボーナスで還元していると言いますが、見合っていると感じている職員は少ないです。
30代で信用金庫からの転職を決意するまでの葛藤

「辞めたい」と思ったからといって、すぐに転職を決断できるわけではありません。家族の反応、経済面、世間の目…いろんな葛藤がありました。ここでは、実際に感じた迷いや不安、そして乗り越えるまでの心の動きを紹介します。
「もったいない」という声に迷った日々
転職を考え始めた頃、最初に直面したのが周囲からの「もったいない」という言葉でした。両親からは「せっかく信用金庫に入れたのに」と言われ、先輩からは「今の待遇は外ではなかなか得られないよ」とアドバイスされ、同期からは「その年齢で転職して大丈夫?」と心配される始末。
確かに、それまで築いてきたものを捨てるのは勇気がいることでした。入庫以来、融資業務や渉外業務を経験し、支店内での立場も確立していました。お客様との関係も良好で、それなりの実績も積み上げてきました。それを手放すことへの不安は大きかったです。
特に悩んだのは「30代からの転職」という壁でした。「若くないのに未経験分野に飛び込んで大丈夫だろうか」「今さら新しい環境に適応できるだろうか」という不安が常につきまとっていました。転職サイトで「20代歓迎」という文字を見るたびに落ち込んだものです。
でも、同じ悩みを持つ人とSNSでつながってみたら、実は多くの人が同じように感じていることがわかりました。「自分だけじゃないんだ」と思えたのが大きかったです。
収入・安定・肩書より自分らしさを選んだ理由
転職を決断する上で、最も大きな決め手となったのは「このまま自分らしく働けるか」という問いでした。信用金庫で働く中で、徐々に自分らしさを失っていることに気づいたんです。
例えば、お客様のためというより数字のために動く営業活動、本当は違和感があるのに組織の方針に従わざるを得ない状況、そして何より「これが本当に自分のやりたいことなのか」という根本的な疑問。
人生100年時代と言われる中で、残りの長い職業人生をただの「仕事」として過ごすのではなく、自分の価値観に合った「キャリア」として充実させたいという思いが強くなりました。
もちろん、収入面での不安もありました。信用金庫では年功序列の昇給もあり、退職金制度もしっかりしています。これを手放すことは、短期的には経済的なマイナスになる可能性もあります。
しかし最終的に、「お金」よりも「充実感」「成長」「自己実現」を優先したいと考えるようになりました。30代というと人生の3分の1を過ぎたところ。残りの人生を「なんとなく」過ごすのではなく、自分の意志で選び取った道を歩みたいと思ったのです。
振り返れば、安定を求めて入った信用金庫でしたが、本当の意味での「安定」とは何か、自分自身に問いかけた時期でした。心の安定も大切だと気づかされましたね。
辞める決意を後押しした言葉
最終的に背中を押してくれたのは、転職経験のある友人のひと言。「辞めてからのほうが人生動いたよ」って。
環境を変えることで、自分の可能性が広がることってあるんだなって。その言葉がなかったら、今でも辞められなかったかもしれません。
信用金庫からの転職で選んだ業界とその理由

転職を決意してからは、自分のスキルと興味を棚卸しし、どんな業界・職種が合っているのかを検討しました。最初は漠然と「信用金庫と違う環境」を求めていましたが、転職エージェントとの面談を重ねる中で、自分の強みや価値観が明確になっていきました。
私が最終的に選んだのは、フィンテック企業の営業職でした。金融とITの融合領域で、信用金庫などの金融機関向けにシステムを提供する会社です。なぜこの会社を選んだのか、その理由と実際に転職してみて感じたことをお話しします。
信用金庫の経験を活かせる職種とは?
転職活動を始めた当初、私は「信用金庫での経験はそれほど価値がないのでは」と思っていました。しかし、転職エージェントとの面談や企業との面接を通じて、意外にも信用金庫での経験は様々な形で活かせることがわかったのです。
私の場合、主に融資業務と渉外業務を経験していました。この経験は、「金融機関の業務フローを理解している」「企業の財務分析ができる」「顧客と信頼関係を構築できる」といった具体的なスキルとして評価されました。
特に、金融機関向けのサービスを提供する企業からは、「ユーザー視点を持っている人材」として高く評価されたのです。
また、信用金庫時代に身についた「報告・連絡・相談」の徹底や、期日を守る姿勢、丁寧な対応なども、社会人としての基礎力として評価されました。
意外だったのは、信用金庫特有の「融資審査のプロセス」や「金融商品の販売経験」が、他業界でも十分通用するスキルだということです。
転職活動をする中で、自分自身の市場価値を客観的に知ることができたのも大きな収穫でした。外の世界から見た「信用金庫経験者の価値」を知ることで自信につながりました。
フィンテック企業を選んだ理由
様々な選択肢を検討した結果、私がフィンテック企業を選んだ理由は大きく3つありました。
1つ目は「金融知識を活かせる」こと。信用金庫で培った金融知識やビジネスマナー、顧客対応力などを無駄にせず、それを武器に新しいフィールドで勝負できると感じました。
特に、金融機関向けのサービスを提供する会社なので、「ユーザー視点」を持っている私の経験は大きな強みになると考えたのです。
2つ目は「成長産業である」こと。フィンテックは今後も発展が見込まれる分野で、自分自身の市場価値も高めていけると判断しました。
信用金庫という守りの姿勢が強い業界から、変化や挑戦を恐れないベンチャー気質の会社に身を置くことで、自分自身も変われるのではないかと期待したのです。
3つ目は「働き方の柔軟性」です。転職先として選んだ会社は、フレックスタイム制やリモートワークを取り入れており、効率重視の働き方が可能でした。
信用金庫時代は「席を立っているだけで怪しまれる」ような雰囲気もありましたが、新しい職場では「成果」で評価される文化に魅力を感じました。
- フィンテック企業の営業・カスタマーサクセス
- 金融系SaaSの導入コンサルタント
- 不動産投資アドバイザー
- 事業会社の財務・経理部門
- 税理士事務所のスタッフ
- 企業のM&Aアドバイザリー
転職後に感じた意外なメリットと気づき
転職して約1年が経ちましたが、予想以上に多くのメリットと気づきがありました。最初は不安も大きかったのですが、新しい環境に飛び込んだからこそ得られた発見が数多くあります。
最も大きかったのは「視野の広がり」です。信用金庫という限られた世界から外に出ることで、ビジネスの多様性や働き方の選択肢の広さに驚きました。
「こんなやり方もあるのか」「こんなキャリアパスもあるのか」という発見の連続です。特に、成長産業で働くことで、社会の変化を肌で感じられるようになりました。
また、意外だったのは「学ぶことの楽しさを再発見した」ことです。信用金庫時代は、どちらかというと受動的な学習が多かったのですが、転職後は主体的に新しい知識を吸収することが求められました。
最初は大変でしたが、新しいことを学び、それを実践で活かせたときの喜びは何物にも代えがたいものがあります。特にIT分野の知識は一から学ぶ必要がありましたが、それが今では私の新たな武器になっています。
もちろん大変なこともありますよ。新しい環境での人間関係構築や、未経験分野の学習は簡単ではありません。でも、その分の成長実感は信用金庫時代の比ではないですね。
信用金庫を辞めたことへの後悔はある?

「信用金庫を辞めて後悔していませんか?」これは転職した私がよく聞かれる質問です。結論から言うと、私は後悔していません。
もちろん、転職して全てが薔薇色になったわけではありませんし、新しい環境での苦労もありました。しかし、総合的に見て「転職して良かった」と心から思っています。
とはいえ、時々懐かしく思うこともあります。地域のお客様との密な関係、長く働いた職場での安心感、同期との絆…。
特に地方の信用金庫では、地域社会の中での「信用金庫職員」という立場やつながりは、都会では味わえない独特のものでした。しかし、それ以上に得たものが大きかったと感じています。
転職後1年が経った今、振り返ると「もっと早く転職すれば良かった」とさえ思うことがあります。30歳を過ぎてからの転職には勇気がいりましたが、新しい環境に飛び込むことで、自分自身も大きく成長できたと実感しています。
辞めて感じた“本当の自分の強み”
信用金庫を辞めて、意外にも「自分の強み」に気づかされたことが大きな収穫でした。信用金庫にいる間は当たり前に思っていたスキルや経験が、外の世界ではとても価値のあるものだったのです。
まず気づいたのは「お金に関する知識と感覚」の強みです。個人の家計管理から企業の財務分析まで、お金に関する幅広い知識と実務経験は、意外にも多くの業界で重宝されました。
特に企業の資金繰りや決算書を読む力は、ビジネスの根幹に関わる部分であり、どんな業界でも通用するスキルだったのです。
次に「人と信頼関係を築く力」。信用金庫では日々の業務を通じて、様々な立場や年齢のお客様と関係を構築する訓練を積んでいました。
この「関係構築力」は、新しい職場での営業活動やチームワークでも大いに役立ちました。特に「傾聴力」と「相手の真のニーズを引き出す力」は、信用金庫時代にしっかりと身についていたようです。
後悔しなかった理由と、今だから伝えたいこと
転職するという事はもの凄く勇気がいる事だと思います。今まで慣れ親しんだ環境を離れ、ゼロから環境を作るということになります。
また、世間体で見たら金融機関というのは格式の高い職業だと思いますし、年収が低いという事はおそらくないと思います。
そこを辞めて別の業種に転職すると言うのは他者から見たら勿体ないと言う人もいるかもしれません。
しかし、自分の人生であり、一度しかない人生でもあります。他人から言われる事については、参考程度に留めておき、自分がどうしたいのかを良く考えて転職したら良いと思います。
正直私自身、転職する前はどの会社に行っても信用金庫時代のような辛い環境が続くと思っていました。
ですが、実際にはそんな事はなく、もの凄く視野が広がった気がしますし、気持ち的にも余裕が持てるようになったと思います。
これから信用金庫を辞めようか悩んでいる方へ

「信用金庫を辞めるべきか」と悩んでいる方に、私から直接お伝えしたいことがあります。まず、悩むこと自体は決して悪いことではありません。むしろ、自分のキャリアや人生について真剣に考えるその姿勢は、非常に価値のあるものです。
ただ、悩みすぎて「思考の渦」に囚われてしまうことには注意が必要です。私自身、約2年間「辞めるべきか続けるべきか」という二択の思考に囚われていました。今思えば、その時間をもっと具体的な情報収集や自己分析、スキルアップに使えば良かったと感じています。
そこで、同じような状況にある方々に、私の経験から導き出した3つのアドバイスをお伝えしたいと思います。これは「必ず辞めるべき」というメッセージではなく、あなた自身が納得のいく決断をするためのヒントです。
迷っているあなたに伝えたい3つのアドバイス
私が2年間の葛藤を経て学んだことを、3つのアドバイスとしてお伝えします。これらは、単に「辞めるべき」という結論ではなく、あなた自身が納得のいく選択をするためのプロセスです。
1つ目のアドバイスは、「漠然とした不満を具体化する」ことです。「なんとなく今の環境に合わない」「もっと違う仕事がしたい」という曖昧な思いを、より具体的に言語化してみましょう。
例えば「どんな時に仕事にやりがいを感じるか」「どんな時に苦痛を感じるか」を書き出してみると、自分の価値観や適性が見えてきます。
私の場合、「お客様の課題解決に直接関われる仕事にやりがいを感じる」「数字のノルマだけで評価される環境に違和感がある」など、具体的な気づきが得られました。
2つ目は、「小さなアクションから始める」ということ。いきなり退職届を出す必要はありません。まずは転職サイトに登録してみる、LinkedIn等のSNSで興味ある業界の人とつながってみる、副業や資格取得に挑戦してみるなど、リスクの少ない行動から始めてみましょう。
私は最初、ファイナンシャルプランナーの資格取得という形で一歩を踏み出しました。その過程で外部の人脈も広がり、視野も広がりました。
3つ目は、「現実的なリスク分析をする」ということ。転職には確かにリスクがあります。しかし、漠然とした不安ではなく、データや情報に基づいた現実的なリスク分析が重要です。
「最悪のケースでも生活できるか」「スキルや経験は他でも通用するか」など、具体的に考えてみましょう。私の場合、半年分の生活費を貯金した上で転職活動を始めました。
また、転職エージェントと面談し、自分のスキルセットでの転職可能性や年収相場も事前に確認しました。
30代はまだ遅くない。人生は何度でも切り替えられる
「もう30代だし、転職するには遅いかな…」そんな不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
私自身、32歳での転職を決意した時、この「年齢」の壁に大きな不安を感じていました。しかし今、その不安は杞憂だったと断言できます。
30代は、社会人としての基礎力と若さの両方を兼ね備えた、むしろ転職に適した年代だと感じています。20代のような体力と柔軟性を持ちながらも、社会人としての経験値も積んでいる。この「経験と可能性のバランス」は、転職市場でも十分に評価されるものです。
実際、私の周りにも30代で転職し、新たなキャリアで成功している人は少なくありません。例えば、34歳で信用金庫からコンサルティング会社に転職した先輩は、金融知識を武器に顧客の経営改善に取り組み、今では部門のリーダーとして活躍しています。
また、36歳でフィンテック企業に転職した方は、信用金庫での経験を活かして金融機関向けの新サービス開発に貢献しています。
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