銀行員として培ったスキルや経験を活かして公務員への転職を考えている方も多いのではないでしょうか。
安定性の高い仕事、ノルマからの解放、ワークライフバランスの向上など、銀行員から公務員へ転職する魅力は確かにあります。
しかし、実際に転職するためには年齢制限やスケジュール管理、試験対策など、知っておくべき情報がたくさんあります。
この記事では、銀行員から公務員への転職に関するすべての情報を解説します。
銀行員から公務員に転職できる?現実的な可能性とは

銀行員から公務員への転職は実際に可能なのでしょうか?
結論から言えば、十分に現実的です。特に近年では社会人経験者を対象とした採用枠が増えており、銀行員のスキルや経験が評価される機会も増えています。
社会人採用枠なら30代以降でも十分可能
公務員試験には年齢制限がありますが、一般枠と社会人経験者枠では大きく異なります。
一般枠(大卒程度)の公務員試験では、多くの場合30歳前後までという年齢制限があります。これに対し、社会人経験者枠(民間企業等職務経験者採用)では年齢上限が大幅に緩和されています。
近年では社会人経験者採用を実施する自治体が急増しており、都道府県・政令市の80%以上で社会人枠の採用が行われています。さらに、受験可能な年齢上限も引き上げられ、59歳まで受験可能な自治体も増加しています。
実際、社会人経験者枠では、単に名目上の年齢上限撤廃ではなく、40代・50代でも合格者が出ています。このように民間経験者枠が拡大されている今は、銀行員から公務員へ転職するチャンスといえるでしょう。
地方自治体の「民間経験者採用」は狙い目
公務員の中でも特に地方自治体は、民間企業での経験を持つ人材を積極的に採用する傾向があります。特に地方自治体の民間経験者採用は、以下のような特徴があります:
- 職務経験の評価:銀行での職務経験が評価される
- 試験内容の簡素化:一般教養試験の配点比率が低く設定されている場合もある
- 面接重視:筆記試験よりも面接での人物評価が重視される
地方自治体では、財政部門や経済振興部門など、銀行での経験を直接活かせる部署も多く存在します。特に地方銀行での勤務経験があれば、地域経済に関する知識や人脈も評価されるでしょう。
また、自治体によっては完全に面接のみで選考を行う「選考採用」という形式を採用しているところもあります。こうした採用形態では、銀行での実務経験が大きなアドバンテージとなります。
金融業界出身者は歓迎されやすい背景も
公務員の世界では、金融業界出身者が歓迎される傾向があります。その背景には以下のような理由があります:
- 財務・会計に関する専門知識:公共財政の管理に役立つ
- 数字に強い:予算編成や分析業務に適している
- 正確な事務処理能力:行政事務に不可欠なスキル
- 対人対応力:市民サービスの窓口業務に活かせる
- 地域経済への理解:地域振興策の立案に役立つ
特に銀行員として培った「コミュニケーション能力」や「数字への強さ」、「ストレス耐性」などは、公務員としても高く評価されるスキルです。
また、銀行員は日々の業務を通じて勉強する習慣が身についている方も多く、公務員試験対策にもその習慣が活かせるでしょう。
公務員試験は年1回が基本!見落とせないスケジュール管理

公務員試験は基本的に年に1回の実施であり、そのスケジュールを見逃してしまうと次の機会まで1年待たなければなりません。適切なスケジュール管理と早めの準備が重要です。
一般枠と社会人枠でスケジュールが異なる
公務員試験のスケジュールは一般枠と社会人枠で異なる場合が多いです。
一般枠のスケジュール(例)
- 4〜5月:試験案内公表・申込受付
- 6〜7月:第一次試験(筆記)
- 8〜9月:第二次試験(面接)
- 9〜10月:最終合格発表
社会人枠のスケジュール(例)
- 7〜8月:試験案内公表・申込受付
- 9〜10月:第一次試験(筆記または書類選考)
- 10〜11月:第二次試験(面接)
- 11〜12月:最終合格発表
社会人枠は一般枠より後ろにずれることが多いため、同じ年に両方の試験を受けることも可能です。また、自治体によっては複数回実施する場合もあるため、常に最新の情報をチェックすることが大切です。
自治体ごとの違いに注意(都道府県・市町村)
公務員試験のスケジュールは自治体ごとに異なります。都道府県、政令市、市区町村など、受験を検討している自治体の公式サイトで最新情報を確認しましょう。
特に社会人経験者採用は、自治体によって実施時期や選考方法、受験資格(必要な職務経験年数など)が大きく異なります。複数の自治体を併願する場合は、それぞれのスケジュールを把握し、効率的な受験計画を立てることが重要です。
また、自治体によっては「随時募集」を行っているところもあります。これは通常の年1回の試験とは別に、必要に応じて採用試験を実施するものです。特に専門性の高い職種や人材不足の分野では、こうした柔軟な採用形態が取られることがあります。
公務員の筆記試験はどれくらい難しい?社会人枠なら負担は軽減できる

公務員試験といえば難関な筆記試験というイメージがありますが、社会人枠では試験内容が簡素化されていることが多く、銀行員が挑戦しやすくなっています。
一般枠の筆記は範囲が広く負担大
一般枠(大卒程度)の公務員試験は、筆記試験の範囲が非常に広いのが特徴です。一般的に以下のような科目が出題されます:
教養試験
- 知能分野:数的処理、文章理解、判断推理、空間把握など
- 知識分野:政治、経済、社会、地理、歴史、物理、化学、生物、地学など
専門試験(行政職の場合)
- 憲法、行政法、民法、経済学、財政学、行政学、政治学など
これらの科目をすべて対策するには、900〜1500時間の学習時間が必要とも言われています。
1日3時間の勉強を続けても、約10ヶ月かかる計算です。銀行員として働きながらこれだけの学習時間を確保するのは、大きな負担となるでしょう。
社会人枠では面接・経歴重視の傾向も
社会人経験者枠では、筆記試験の比重が低く設定されていることが多いです。特に以下のような特徴があります:
- 筆記試験が簡素化されている
- 面接試験の配点比率が高い
- 職務経歴や実務経験が重視される
例えば、一般枠では筆記試験と面接試験の配点比率が7:3程度であるのに対し、社会人枠では3:7と逆転していることもあります。これは、実務経験を持つ社会人の能力を適切に評価するための配慮と言えるでしょう。
また、社会人枠では「職務経験論文」を課すところも多く、これまでの実務経験や成果をアピールする機会があります。
銀行員としての経験や実績を論文にまとめて提出することで、筆記試験の結果だけでは測れない能力を評価してもらえます。
公務員試験の面接で何を聞かれる?銀行員が準備すべき質問とは

公務員試験の面接では、志望動機や自己PRなど基本的な質問に加えて、銀行員から公務員への転職を考える人特有の質問も予想されます。事前に準備しておくべき質問と回答のポイントを見ていきましょう。
「なぜ銀行を辞めたのか?」をどう前向きに語るか
「なぜ銀行を辞めるのか」という質問は、ほぼ確実に聞かれるでしょう。この質問への回答で重要なのは、銀行や銀行業界の不満・批判に終始しないことです。前向きな理由を明確に伝えることが大切です。
NGな回答例
- 「ノルマがきつくて精神的に疲れたので」
- 「銀行の将来性に不安を感じたので」
- 「残業が多く家庭との両立が難しかったので」
好印象な回答例
- 「銀行で培った金融知識や対人スキルを活かしながら、より直接的に地域社会に貢献したいと考えました」
- 「銀行では特定の顧客層へのサービス提供でしたが、より幅広い市民の方々の生活を支える業務に携わりたいと思いました」
- 「銀行での経験を通じて地域経済の課題に気づき、行政の立場からより包括的に地域振興に関わりたいと考えるようになりました」
転職理由は、「何から逃げるか」ではなく「何を目指すか」という視点で語ることが重要です。銀行での経験があったからこそ気づいた公務員としての新たな目標や可能性を伝えましょう。
「銀行の経験をどう活かすか」を具体的に用意
銀行での経験を公務員としてどのように活かせるかを具体的に伝えることは、面接での重要なアピールポイントとなります。抽象的な「スキル」の羅列よりも、実際の経験に基づいた具体例の方が説得力があります。
以下のようなスキルと、それを裏付ける具体的なエピソードを準備しておきましょう。
対人対応力
「窓口業務で高齢のお客様に分かりやすく説明する工夫を重ねてきました。この経験は市役所窓口での市民対応に直接活かせると思います」
正確な事務処理能力
「預金業務で培った正確な事務処理能力は、税務課や給付金業務などで役立てられると考えています」
金融知識
「融資担当として地元企業の財務分析を行ってきた経験は、市の産業振興策の立案・実行に活かせると考えています」
マネーリテラシー
「個人のお客様の資産運用相談に応じてきた経験は、市民への経済教育や生活支援策の立案に役立てられると思います」
これらのスキルを、具体的な業務経験のエピソードと共に伝えることで、銀行員としての経験が公務員としても価値があることをアピールできます。
志望自治体に応じた政策・地域貢献の視点が鍵
志望する自治体の特徴や課題を理解し、それに対してあなたがどのように貢献できるかを伝えることで、志望動機の説得力が大幅に高まります。面接前に以下のような情報を調査しておきましょう。
- 自治体の基本情報(人口、産業構造、財政状況など)
- 総合計画や主要政策
- 近年力を入れている事業や課題
- 首長の政策方針
- 地域特有の課題や特色
これらの情報を元に、銀行員としてのあなたの経験やスキルがどのように役立つかを具体的に結びつけて説明できるようにしましょう。例えば:
- 「○○市は観光振興に力を入れていますが、銀行で地元観光業者の融資担当をしていた経験を活かし、観光振興策の立案・実行に貢献したいと考えています」
- 「△△市は高齢化が進んでいることを課題としていますが、銀行での高齢者向け資産運用相談の経験を活かし、高齢者福祉政策の充実に貢献したいと思います」
このように、あなたの経験と自治体の課題や政策を具体的に結びつけることで、「なぜこの自治体なのか」という点を明確に伝えることができます。
転職活動と公務員試験の併用は可能?並行戦略で失敗を防ぐ

公務員試験は年に1回の機会であり、結果が出るまでに数か月かかります。そのため、公務員試験のみに賭けるのはリスクが高いと言えます。転職活動と公務員試験を並行して進める戦略について見ていきましょう。
試験の結果を待つだけはリスク大
公務員試験は、試験から最終合格発表まで長期間かかります。一般的には以下のようなスケジュールです:
- 第一次試験(筆記)
- 第一次試験合格発表(約1ヶ月後)
- 第二次試験(面接)
- 最終合格発表(約1ヶ月後)
つまり、試験を受けてから最終結果が出るまでに2〜3ヶ月程度かかります。そして、合格したとしても、実際に勤務開始となるのは翌年度の4月からというケースがほとんどです。
仮に不合格となった場合、次の公務員試験までさらに待たなければならず、最悪の場合1年以上のブランクが生じることになります。
このようなリスクを避けるためには、公務員試験と並行して民間企業への転職活動も進めることが賢明です。
転職エージェントを活用して民間も同時に探す
公務員試験と並行して民間企業への転職活動を進める際は、転職エージェントの活用がおすすめです。転職エージェントを利用するメリットは以下の通りです。
- 効率的な求人探し 転職エージェントは、あなたのスキルや経験に合った求人を紹介してくれます。自分で求人サイトを探す手間を省けます。
- 非公開求人へのアクセス 転職エージェントは、一般に公開されていない「非公開求人」も多く保有しています。選択肢の幅が広がります。
- 転職市場の情報提供 銀行員の転職市場動向や年収相場などの情報を提供してくれます。
- 書類・面接対策のサポート 履歴書・職務経歴書の添削や面接対策など、転職活動全般をサポートしてくれます。
銀行員の転職に強いエージェントとしては、「リクルートエージェント」「dodaエージェント」「マイナビエージェント」などが挙げられます。複数のエージェントに登録し、より多くの選択肢の中から最適な道を選べるようにしましょう。
書類・面接サポートを受けながら公務員対策にも活かす
転職エージェントから受けるサポートは、民間企業への転職だけでなく、公務員試験対策にも活かせる部分が多くあります。
- 履歴書・職務経歴書の添削 転職エージェントで添削を受けた職務経歴書は、公務員試験の「職務経験論文」や「面接カード」の作成にも役立ちます。自分のスキルや強みを客観的に整理することができます。
- 面接対策 民間企業の面接対策は、公務員試験の面接にも通じる部分があります。特に「自己PR」「志望動機」「転職理由」などは、内容を調整するだけで公務員試験の面接でも使えるでしょう。
- 銀行員としての市場価値の把握 転職エージェントとの面談を通じて、銀行員としての自分の市場価値を客観的に知ることができます。これにより、公務員と民間企業のどちらが自分のキャリア形成に適しているかを判断する材料になります。
公務員試験と民間企業への転職活動を並行して進めることで、不合格となった場合のリスクを減らすだけでなく、自分自身のキャリアについて多角的に考えるきっかけにもなります。
両方の選択肢を持っておくことで、精神的な余裕も生まれるでしょう。
【まとめ】公務員転職は現実的。そのためには”早めの行動”が鍵
銀行員から公務員への転職は、十分に現実的な選択肢です。特に社会人経験者枠の拡大により、銀行員のスキルや経験を活かして公務員になるチャンスは以前より広がっています。ただし、成功するためには早めの行動が鍵となります。
社会人経験者枠をうまく活用する
社会人経験者枠は、銀行員にとって公務員転職への最短ルートといえます。従来の公務員試験とは異なり、以下のような特徴があります。
- 年齢制限の緩和:多くの自治体で40代、50代でも受験可能
- 試験内容の簡素化:筆記試験が簡素化されていたり、SPIタイプのテストのみの場合も
- 職務経験の評価:銀行での経験やスキルが評価される
- 面接重視:人物評価や意欲を重視する傾向
社会人経験者枠を最大限に活用するためには、自分のスキルや経験を棚卸しし、公務員としてどのように活かせるかを具体的に整理しておくことが重要です。
特に銀行員として培った対人対応力、正確な事務処理能力、金融知識などは、公務員としても価値のあるスキルです。
また、社会人経験者枠は自治体によって受験資格や試験内容が異なるため、志望する自治体の最新情報を常にチェックしておきましょう。
転職スケジュールは6か月前からが理想
公務員転職を成功させるためには、少なくとも6か月前から準備を始めることが理想的です。以下のようなスケジュールで進めると良いでしょう:
6ヶ月前
- 自己分析(スキル・経験の棚卸し)
- 志望自治体の調査・選定
- 試験情報の収集
- 筆記試験対策の開始
3〜4ヶ月前
- 志望動機の整理
- 職務経験論文の準備
- 面接対策の開始
- 民間企業への転職活動も並行して開始
1〜2ヶ月前
- 試験申込
- 模擬面接の実施
- 最終的な試験対策
試験〜合格発表
- 次の手を打つ(他の自治体試験や民間企業への応募)
特に筆記試験対策は時間がかかるため、早めに開始することが重要です。社会人枠であっても、一定レベルの学力は求められます。SPIタイプのテストであれば比較的短期間での対策も可能ですが、従来型の公務員試験の場合は、より長期的な準備が必要です。
早めの行動が成功への鍵となります。「今から始めても間に合わないかも」と思うより、「今日から始めれば、次の試験に間に合う」という前向きな姿勢で取り組みましょう。
エージェント活用でキャリアの選択肢を広げる
公務員転職を目指す過程で、転職エージェントを活用することは非常に有効です。転職エージェントは以下のようなメリットがあります:
- 客観的なキャリア評価 銀行員としてのスキルや経験を客観的に評価してもらえます。自分では気づかない強みや市場価値を知ることができます。
- 多様な選択肢の提示 公務員以外にも、銀行員のスキルを活かせる転職先を紹介してもらえます。選択肢の幅が広がります。
- 転職活動のサポート 履歴書・職務経歴書の添削や面接対策など、転職活動全般をサポートしてもらえます。そのノウハウは公務員試験対策にも活かせます。
- 精神的な安心感 公務員試験の結果が出るまでの間も、他の選択肢を持っていることで精神的な余裕が生まれます。
公務員転職を第一志望としつつも、同時に民間企業への転職活動も進めることで、「公務員になれなかったらどうしよう」という不安を軽減できます。
また、複数の選択肢を比較検討することで、自分自身のキャリアについてより深く考えるきっかけにもなるでしょう。
銀行員から公務員への転職は、決して簡単ではありませんが、適切な準備と戦略があれば十分に実現可能です。社会人経験者枠をうまく活用し、早めの行動を心がけることで、あなたの理想のキャリアを実現しましょう。
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