私は信用金庫に勤めて20年になります。毎年多くの新入社員が入庫してきますが、3年以内に三分の一程度の方が転職していきます。
厚生労働省の調査によると、大卒就職者の約3割(32.1%)が3年以内に離職しているそうです。
これだけ見ると最近の子は我慢が出来なくてけしからんと思われるかもしれませんが、転職市場が今ほど盛んではなかった30年前の離職率も3割程度だったようです。
昭和62年 | 平成5年 | 平成15年 | 平成25年 | 平成30年 | |
---|---|---|---|---|---|
1年目 | 11.1% | 9.4% | 15.3% | 12.8% | 11.6% |
2年目 | 9.1% | 7.8% | 11.0% | 10.0% | 11.3% |
3年目 | 8.3% | 7.1% | 9.4% | 9.1% | 8.3% |
合計 | 28.4% | 24.3% | 35.8% | 31.9% | 31.2% |
上のグラフは厚生労働省から発表されている資料で、3年以内の離職率の推移です。多くの若者が3年以内に仕事を辞めるというのはいつものことのようです。
ただ、これはあくまで平均であり、離職率の高い業界もあればそうでない業界もあります。サービス業などは4割程度の新卒社員が離職するようです。
信用金庫も同様に離職率は高い傾向があります。年度によっては4割程度の新卒社員が辞めているイメージです。信用金庫は楽に稼げると思って入社してくる方が多いのが原因かなとは思っています。
今回は私が勤めている信用金庫に入社してきた部下について紹介させていただきたいと思います。まだ離職してはいませんが、時間の問題かなとは思っています(笑)
信用金庫で渉外係となった新人のウソが発覚
次に私の部下で入社2年目、渉外係となって1年目のKYくんについて話したいと思います。私はチーフの役割を担っており、部下の営業成績進捗管理のため毎日簡単なヒアリングを行っています。
それをとりまとめて、事業計画達成に向かって取り組んでいきます。部下が目標数字から乖離し始めたら、早期に原因を突き止めて軌道修正していくのが私の役割です。
KYくんは一言で言えば今時の軽い感じのノリの子で、お客様と話しているのを横で聞いていても営業ができないという雰囲気の子ではありませんでした。
しかし、なかなか成績が上がってきません。毎日の行動状況をヒアリングしても訪問軒数も問題なく、なぜ成績が上がらないのか疑問でした。
見せかけの仕事ぶりが露呈
私が成績が上がらない彼の訪問活動表の面談状況を毎日チェックしていると、不在先が多いことが気になりました。
セールスターゲットの顧客(ここで言う顧客とは自信用金庫と何らかの取引がある方を指します)が例え不在であっても家族と面談し、情報収集をして次の訪問に繋げることが重要です。
ですから必ずインターホンをならし、家族もいなかったとしても名刺とチラシをポストに投函して信用金庫の担当者が訪問した形跡を残すよう指導しています。
ローンニーズのタイミングで声をかけていただけるかもしれないからです。この積み重ねが案件発掘に繋がり、各種募集項目の目標達成につながると私は信じています。
お客様宅を訪問し、FacetoFaceのお付きあいをしているからこそ、信頼関係が構築されます。自分のノルマの都合だけで訪問活動を続けていると、いずれ行き詰まってしまいます。
彼に訪問状況をヒアリングすると、「ちゃんと訪問していますが、本当に不在が多いんです」と言います。
「家族の人に会えたのか?帰宅時間や平日の勤務形態は聞いたか?やみくもに訪問するのではなく、事前に勤務先や取引内容の把握をしたうえで訪問したのか?」
「不在でも家の外観や周りの様子から家族構成やローンニーズに繋がる情報収集ができたのか?」と普段から指導していることを聞くと、ちゃんと実践しているといいます。
最初は信用していたのですが家族とも会えていない不在先が多すぎるため、次に家の外観や名刺を投函したポストの特徴などを質問するようにしました。それでもスラスラと答えます。
しかし、毎日の訪問活動表を並べると同じ家に毎日訪問して毎日留守です。訪問時間を変えるなどの工夫をするよう指導し、時間を変えて訪問しても不在の日々が続きました。
そこで私はある顧客宅を訪問し、家の外観やポストの特徴を観察したうえでヒアリングを行いました。その家は建築後25年以上は経過している古い家でしたが、ポストだけは新しく間口も広い独立式のものでした。
その日は午前も午後も黒の軽自動車が止まっていました。彼は私のヒアリングに対し「新し目の家でしたが、ポストは古くチラシは入れにくかったです。午前中に訪問しましたが車は止まっておらず留守でした」と真逆のことを答えたのです。
そこで私は「こいつ行ってないな~。ウソつきやがったな~」と確信し、問い詰めると今までのウソを白状したのです。
信用金庫の営業に向いているのは素直さと真面目さ
新人の彼にウソをついていた理由について尋ねると以下のように答えてきました。
「カードローンのような金融商品を押し付ける営業ができませんでした。私がお客さんならいきなり来た営業マンの話なんて聞きたくありませんので。また断られるのが怖かったんです。最初は家の前を通って、車がなければ不在と報告していました。最近では行ってなくても記憶だけで行ったふりをしていました」と。
彼は営業の仕事に向いてないのでしょう。カードローンすら売れない営業マンに中小企業の資金繰り支援や本業支援の役割を担えるでしょうか?誰が相談したくなるでしょうか?
内勤事務であれば力を発揮するかもしれませんが、残念ながら私どもの信用金庫の若手男性職員に求めているのは素直で真面目にコツコツと営業活動ができる人材です。うまい口と、要領の良さではないのです。
上司にその場しのぎの嘘を平気でつき続ける人間に信頼して大事な仕事は任せられません。1度失った信用を取り戻すのは並大抵のことではありませんが、彼の今後の奮起に期待します。
ただ、こういった新人は辞めていくケースがほとんどです。サボり癖がついてしまうと改善することは難しいからです。サボっていると成績が上がらずに上司から怒られて嫌になり辞めてしまうというパターンです。
入社して3年はがむしゃらに働くのも良いこと
3年以内に転職をすることは悪いとは思いませんし、今は転職市場も盛んですし転職したければしても良いと思っています。
ただ、3年は同じ会社でがむしゃらに働くことも悪くはないんじゃないかと思います。3年働くことで社会人としての最低限のマナーは身に付きますし、スキルアップにも繋がるからです。
就職してすぐに辞めた社員と、3年間しっかりと社会人経験をした社員であれば、会社側としては3年間働いた社員を採用したいと思うはずです。
自身の市場価値を高めるためにも、ある程度の期間真剣に働くことは大切だと考えています。これから信用金庫への就職を考えている方の参考になれば幸いです。
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